東京駅八重洲口にあるコカ・コーラの自動販売機に近付く。そこで売られる商品名は『北アルプス 安曇野銘水』。販売価格は110円で、爽健美茶と静岡茶の間で売られている。
このような魅力ある商品がありながら、なぜ地元ではこのような商品を販売しようとしないのか。安曇野にある自動販売機で、安曇野の水を販売している自動販売機をわたくしは1台しか知らない。
安曇野の人々は、都会人があこがれお金を出して買う水に囲まれていながら、わざわざ自動販売機で人工的に着色、加味された水を購入するのだ。
なぜ安曇野の水のような貴重な資源を活用しようとしないのか。みやげ物屋では店内で物だけを売り、飲料は外にある、日本中どこにでもある自動販売機で提供しようとする。効率のみを求めている。それがどのような結果を招くのか。
観光地は、いま勝ち組と負け組に完全に二分されようとしている。負け組は効率化を図り、サービスを削って低価格化を図った地。勝ち組は、付加価値を増し高価格でもそれに匹敵するサービスを充実させる地。その勝ち負けを分けているのがリピーターである。
物だけを効率的に売り、飲み物を通じた語らいもなく、どこのものとも知らない飲料を外で自動販売機で提供するような観光地に、はたしてリピーターが訪れるのか。
このような場所は、けっして勝ち組になることはあるまい。