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自転車に乗る漱石 百年前のロンドンの自動販売機
イギリスにおける絵葉書人気を決定付けたのはボーア戦争(1899-1902)であった。大判の葉書が認可されたのとちょうど同じ頃で、南アフリカで活躍するイギリス軍人の姿が、ユニオン・ジャックの旗のもとに雄々しく描かれた絵葉書が人気を博した。漱石はロンドン到着の翌日、「南亜ヨリ帰ル義勇兵歓迎ノタメ非常ノ雑踏ニテ困却セリ」(1900年10月29日)と、日記に書いている。
おりしも1900年頃を境にカラーの絵葉書が出回るようになり、コレクターたちの収集熱を駆りたてた。この年の7月にはコレクターを対象にした雑誌「ザ・ピクチャー・ポストカード・マガジン」(図版47)が誕生し(漱石の渡英は同年10月である)、毎号表表紙にタックス社が全面広告をうち、消印のあるわが社の絵葉書を最も多く集めた者に1000ポンドの賞金を出す、と宣伝した。主要な鉄道駅には自動販売機が設置され、絵葉書用携帯ペンやアルバムが市販され、各地に絵葉書クラブが結成された。郵便配達夫のかばんはメッセージのない絵葉書でいっぱいになった。コレクター宛てに各地のコレクターから送られてきた絵葉書である。まさに絵葉書黄金時代の到来である。

わたくしが読んでいるこの本は、清水一嘉著「自転車に乗る漱石 百年前のロンドン」(朝日選書689  2001年12月25日第1刷発行)

漱石の時代、イギリスではたばこの自動販売機があったと記す書籍を見て、たばこ好きの漱石のこと、もしや彼の書籍のいずこにかたばこの自動販売機に関する記載がないかと、彼の書籍・書簡集を隅から隅まで探したのですが、まだその発見に至っていません。そんな中で、漱石の日記と、漱石の滞英したころのロンドンの様子をシンクロさせたこの本に出会ったのがほんの数日前のこと。
漱石の日記の中には「3月19日 Craig氏ニ至ル。・・・・・・夜入浴、烟草四箱ヲ買フ。」といった、たばこを買った旨の記載はあるようなのだが、たばこの自動販売機に関する記載はされていないのか。
そんななかで、漱石が日本にいる子規あてに大量の絵葉書を出したといった話(「16 絵葉書を子規に送る」)の中で突如出現した1900年当時の駅に設置された自動販売機の記載。文脈上、この自動販売機は「絵葉書の自動販売機」か「絵葉書用携帯ペンの自動販売機」か、あるいは「アルバム」なんだろうが、これは参考書籍をあたってみないといけない。

漱石も駅に置かれた自動販売機を使ったのだろうか。
by epole | 2011-11-09 20:58 | 小説にみる自販機


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