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「恐怖!!ばちあたり自販機」の心霊写真自動販売機
最近、バカバカしくも不気味な噂を聞いた。なんと、“心霊写真の自動販売機”があるというのだ。この世にこれ以上無意味な自販機があろうか。また、それが本当に事実かどうかさえ定かではない。噂の糸をたぐりにたどってみると、この自販機を見たと言い張る人物が漫画家の「さくらももこ」であることが分かった。(中略)それでも、我々は「さくらももこ」に聞くことにした。それ以外に自販機のありかを知る者が無いのだからやむをえない。
(中略)
それにしてもいったいどういう意図でこの自販機を造ったのか。(中略)ナゾがナゾを呼ぶ中、蓬莱が自販機に100円玉を入れてみた。100円玉はとりあえず投入口の溝にハマったが、下へ落ちてゆかない。「あれ?落ちないぞ、おかしいな」と、あわてる蓬莱。100円玉は見えている。が、取り出す事もできない。空しい風が吹く。蓬莱の100円玉は、まんまと自販機に奪われてしまった。つまり、この自販機は故障中だったのである。我々は、この自販機の販売元である㈱コスモス社を真剣に調査しようと心に決めた。
(中略)
そもそも、どういう考えで、心霊写真を自販機で売ろうと思ったのか、という質問に対して「今、心霊写真がブームなのでけっこう売れると思ってやってみたんですが……」と、ビートたけし(似)は言った。「この自販機は、まだ試しの段階だったんですよ。このテストで良い結果が出れば全国的に大量に売り出せたのですが、どうもコレは成績が悪かったので2週間ほどで見切りをつけました」と寂しそうに語るのは、そのまんま東(似)。
(中略)
こんな㈱コスモスにも、悩みは尽きない。本来、ここの会社は子供のオモチャのカプセルを造っており、それは道端に置いてある、ガチャガチャッとまわすとポンと出てくるアレである。(中略)また、盗難にも頭を痛めている。「ガチャガチャ」の機械なら、丸ごと盗んでしまえるので店先から「ガチャガチャ」が消えることがしょちゅうあり、月500件くらいの被害が出ているとか。今までで最もすごかった事件は親子3人で「ガチャガチャ」を盗みまくり、盗みながらも旅から旅へ渡り歩き、3か月間で150万円も稼いだというから大したもんである。念のために言っておくが、「ガチャガチャ」を盗む者たちは、機械の中のお金が目当てなのであり、何もオモチャが欲しくて危ない橋を渡っているわけではないぞ。それにしても、高円寺の心霊写真販売機現場には、「ガチャガチャ」と共にコンドームの自販機が置いてある。まさか、それも㈱コスモスの仕業としたら、もはや㈱コスモスは子供のオモチャではなく、大人のオモチャの販売にも手を伸ばし始めた証なのだが、当然コンドームはゴムの会社の仕業だった。


わたくしが読んでいるこの本は、
うみのさかな&宝船蓬莱著  『恐怖!!ばちあたり自販機』(「うみのさかな&宝船蓬莱の幕の内弁当」収録。1992年3月30日初版発行1992年6月15日4版発行)

表題のとおり、全体が基本的に自販機に関して述べられているので、引用が長くなってしまいました。このあと著者の興味は販売品目である心霊写真の真偽へ移っていくのだが、わたしはそれ自体にはあまり興味がない。
ともかくも当時、高円寺には、心霊写真の自動販売機が試験的に稼働していたようである。

フリー百科事典ウィキペディアには、㈱コスモスは1988年に倒産したこと、同社の販売子会社だった「ヤマトコスモス」が現在も栃木県宇都宮市で営業を続けており、栃木県には購入可能な自動販売機がいくつか残っている旨が記載されている(平成22年2月27日午前10時30分現在の記述)。

「うみのさかな&宝船蓬莱の幕の内弁当」は、『月刊カドカワ』の’88年8月号から’89年10月号までに連載された「さかな・蓬莱の幕の内弁当」をまとめたもので、㈱コスモスへの取材は、まさに倒産寸前の取材であったようだ。
なお、倒産の原因が、心霊写真にあったのかどうかは定かではない。

PS.日刊サイゾーには、ヤマトコスモス会長へのインタビューが掲載されています。コスモスの自動販売機の写真も数枚ありますが、残念ながら心霊写真はありません。
by epole | 2010-02-27 10:31 | 小説にみる自販機


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