これは諏訪大社下社近くにある、諏訪湖オルゴール館奏鳴館の2階に展示された自動演奏機。ガイドの方がこちら側のガラス戸を開けて何か操作をしますと、いかにも景気のよいアメリカ的な音楽を、中のアコーディオンや木琴やらが演奏するのです。
いまは「触れないでください」と注意書きが添えられていますが、その昔はコインを投入して演奏を楽しんだそうで、大きな木製の筐体の前面向かって右側(現在の多くの自動販売機のコイン投入口のある辺り)にコインを投入するスリットが縦にあいています。 私のイメージでは、日本における最初の自動販売機は、上野公園又は浅草公園に置かれた自働体量計だったのですが、ジュークボックス(自動販売機(自動サービス機)の一種)の前身であるオルゴール(自動演奏機)類はどうだったのか調べなければなりません。 ちなみに、 1862年に発行された「横浜開港見聞誌」(橋本玉蘭斎著 国立国会図書館所蔵)には「ヲルゴル」としてオルゴールの図と紹介文が掲載されていますが、これはコインを投入する型ではないようです。wikipediaでジュークボックスの項を開いてみますと、そこには「ジュークボックス以前に、硬貨を投入すると動作するオルゴールや自動ピアノが存在していた。」とだけ関連の記述があるばかりなのでした。 #
by epole
| 2011-10-16 14:03
| 総論
ところが、頭三分の一を失ったプリオンタンパク質は、タンパク質xとは結合できないにもかかわらず、中途半端なことに、タンパク質Yとは完璧に結合しうるのだ。そのことによってYは、擬似的にパートナー分子が存在する状況を与えられることになる。そこではバックアップが作動するようなSOSは発信されない。そして情報伝達経路は、何も知らないまま、さらに複雑なネットワークを組み立てていく。
やがてマウスは誕生し、道の環境と遭遇する。脳の神経活動はどんどん盛んになり新しいシナプスが形成されていく。おそらくタンパク質Xからタンパク質Yへの情報伝達はこのような脳の発達と関係して必要とされる機能なのだろう。その齟齬は、生まれてすぐにではなく徐々に現れることになる。XとYを橋渡しするはずのプリオンタンパク質は、ここではXの情報を伝達しないまま、Yと結合する。それはちょうど歪んだ硬貨を投入された現金識別装置のようにフリーズを起こすことになる。そして、そのフリーズは自動販売機の機能全体を致命的に停止してしまうことになるのだ。 わたくしが読んでいるこの本は、福岡伸一著「生物と無生物のあいだ」(講談社新書(1891) 2007年5月20日第1刷発行2007年11月7日第12刷発行) ここで筆者は遺伝子操作により細胞のあるパーツ全てをノックアウトしたマウスがまったく正常そのものであるのに対して不完全な遺伝子をノックインした場合、致命的な以上をもたらすこと、そのことを分かりやすく示す比喩として「歪んだ硬貨を投入された現金識別装置」あるいは「自動販売機の機能全体を致命的に停止」という表現を用いている。 もちろん最近の自動販売機では歪んだ硬貨などは入り口で引っかかってしまい投入し得ないし、あるいはそこを通過したものはきちんと識別装置をとおり、認識され、あるいは認識されずにそこを通り抜けてコトンと落ちる。あるいは硬貨など使用しなくても、FeliCaなどの非接触装置により、自動販売機の機能を使用することは可能である。さらに、自動販売機の機能が多様化するなかで、金銭が投入されること自体が自動販売機の機能を動かす必須の条件とは言えなくなってきている。 さらに違和感を覚えるのは、一般に自動販売機はAという事象を施せば自動的にBという結果が現れる比喩に使われるのだが(もちろん故障してBという事象が起こらない例としても用いられるのだが。)、ここでは実に生物が活動を停止する例になぞらえているのである。この部分では、筆者はここに至った生物の活動はもはや治癒のしようのない不可逆的な、機械的なものと認識しているのか、あるいは自動販売機を、生物になぞらえて観察していたのか。いずれにせよ、私にはすこしつながりに無理を感じるところである。 それにしても、この本の読み応えのあることよ。 秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない。 生物は生きていくため、自らを壊し続け、その以前の姿のまま造られ続ける。生命とは動的平衡にある流れである。 そして生きることをやめたとき、自らを壊し続けることを停止するのだ。 #
by epole
| 2011-10-15 22:03
| 小説にみる自販機
情報の並置、相対化
また、「世界の縮小型を提示し、人に目から隠された全体を、生物や物の各範疇の見本によって目に見えるものとするという、百科全書的目的を持ったコレクション」を見せようとするものが出てきたとポミアンは言う。コレクションのカタログ同様、18世紀の百科全書もまた、マクロな世界を情報化〈ミクロ化〉して所有し、移動できるようなカタログとしたのだとも言えるだろう。重要なことは、そうした世界のカタログは線的な形式で語るのではなく、フーコーが指摘しているように情報を並置していることである。それは、あらゆる事象を等価な情報とすることでもある。 1754年にはイギリスで、有名なトーマス・チッペンデールによる『ジェントルマンと家具メーカーのための指針』という家具カタログがつくられている。こうしたカタログが出現してきたことは、家具の様式が地域や職業や階級に固有なものであり続けることが、すでにできなくなり、様式が相対化され、等価な情報となったことを示している。つまり、それまでの社会制度と結びついていた様式デザインが商品化され、市場経済のシステムに組み込まれたことを意味する。それは、産業ブルジョアジーの台頭と関連していた。 ここでん、現在の電子書籍についてふれておけば、インターネットが出現してくることによって、たとえばカルフォルニア大学バークレー校のキャンパスに置かれた自動販売機の中でどの販売機の清涼飲料のコンディションがいいのかという情報と、現代思想の新しいシーンに関する情報は等価になり、情報の実質の差異にではなく、いかに早くその情報を手にしているかという速度にその価値が置かれる。世界は電子情報カタログ化される。つまり、次々に新しい情報が並置される電子カタログ的な知のあり方がそこには反映されている。 わたくしが引き続き読んでいるこの本は、柏木博著「日用品の文化誌」(岩波新書(新赤版619) 1999年6月21日第1刷発行) インターネット上に流れる情報は、殆どは「わたくしにとっては」意味のないもの、自分勝手な思い込みや浮かれた気分、思慮に劣る発言(たとえば先の経済産業大臣の発言のような)と思われるものが多く、それらは真に重要だと「わたくしが」認識する情報に比べて途方もなく多いのは事実であります。しかし、わたくしはそのような海の中から「自分にとって」重要な情報を取得する術を身につけています。 その手法は、カタログの上にあるのでなく、カタログを読み取る手法を消費者が身につけているのだと感じています。 ところが近年はその手法の分析が進み、カタログの方がその姿を変えて、私の手法に適合するように、カタログに優位なようにその形態を変化させてきています。(たとえばアマゾンやグーグル検索のように。) それは、時に大変便利なことなのではあるけれど、一方で、カタログによる情報の一極化が進むことがとても危険に思えるのであります。 さて、そんなカタログ上に「カルフォルニア大学バークレー校のキャンパスに置かれた自動販売機の中でどの販売機の清涼飲料のコンディションがいいのか」という情報が掲載されたとしたら、それは「わたくしにとって」とても興味深い情報なのだなぁ。 #
by epole
| 2011-09-12 21:23
| 小説にみる自販機
使い捨てる紙コップ
アメリカは紙をそれまでの使い方とはまったく異なった形で使った、新しい紙の文化を生み出したと言っていいだろう。 アメリカでつくられたもっとも象徴的な紙製品は、紙コップである。紙製のコップが考案されたのは1908年のことであった。当初は紙コップそのものが商品として扱われたり販売されたわけではない。最初は、1セント・コインを入れて紙コップで水が飲める販売機がつくられたのであり、つまり、飲料水販売のために紙コップが使われたのである。この飲料水販売機は、ヒュー・ムーアという人がアメリカン・ウオーター・サプライ・オブ・ニューイングランドという会社名でこの商品化したものだ。 たまたまこれと同じ時期に、カンサス州の保健委員をしていた医者のサミュエル・J・クラムバインという人物が、飲料水を飲むのに共同で使うブリキ製のコップが、結核菌を蔓延させる要因になっていると主張した。そして、カンサスのユニオン駅に入って来る列車に備え付けられているブリキ製コップをカンサス大学の細菌学科のM・A・バーバーのところに持ち込んだのである。その結果、結核菌が発見された。結局、カンサス州ではブリキ製共同コップの使用を禁止するということになった。(中略)こうした一連の出来事を背景にして、アメリカの各州で、しだいに共同コップ使用の禁止法が承認されていったのである。 以後、急速に紙コップの市場が形成されていった。ムーアは結局、最終的に紙コップを「デキシー・カップ」という商品名をつけて、独立した商品として売り出すことになった。 道具を他人と共有しない。再使用しない。その結果としての使い捨てが、紙製品という形をとった。 わたくしが読んでいるこの本は、柏木博著「日用品の文化誌」(岩波新書(新赤版619) 1999年6月21日第1刷発行) いま、行楽等で、大人数で飲み物を共有する時かかせない紙コップの始まり。その起源をアメリカの紙文化に位置づけており、さらにその紙文化の起源が自動販売機に位置づけられているのであります。 わたしが最初に出会った自動販売機は、デパートの踊り場に設置された、機械の上部が透明ドームになっていて、内側からドームの天井に向かって水を吹き上げる、「オアシス」タイプの飲料水販売機でありました。それは脇に組み込まれたカップホルダーからあらかじめ紙カップを取って機械にセットし、10円玉を入れてボタンを押すと、紙コップ一杯の飲料が注がれるというものでありました。このタイプで現在稼働しているのは日本国内では大田市の一台だけと承知しているのであります。 自動販売機では見かけなくなりましたが、いまでも例えば殆どの高速道路のパーキングの給湯器では、小さな小さな紙コップがセットされ、これにお茶などを注いで飲むことができるようになっています。また、一部のスーパーマーケットでは、水を紙コップで供給しています。 #
by epole
| 2011-09-03 12:03
| 小説にみる自販機
それよりもやはり一人二役を問題にしよう。江戸川乱歩はパノラマ狂いの夢想家から、おなじみの怪人二十面相まで、たえず一人二役あるいは一人何十役を書いてきた。その第一作の連載が始まった大正十五年という年が、すこぶる象徴的ではあるまいか。大正十五年にして昭和元年、すなわち〈一年二役〉の年だった。
その年のある一日の銀座交通量が、歩行者九万七千人余、車四万四千台あまりとの記録がある。ラジオ放送が始まった矢先のことだ。東京駅と上野駅に入場券の自動販売機がお目見えした。建物の屋上にまばゆいネオンが登場した。男のような断髪が流行、モガ・モボがとりざたされた。翌年、ニセ札が出回って世間を騒がせた。 時代に明敏な推理作家は、いまや始まった複製時代を正確に見てとっていた。心理学でいう「ドッペルゲンガー(二重人間〉現象」が現実のものになった。スイッチをひねるだけで、遠くの他人がしゃべりだす。自動車というイダテン走りの足を得て、人はここ、かしこと自由自在にとびまわれる。 わたくしが読んでいるこの本は、池内紀著「読書見本帖『パノラマ島奇談』江戸川乱歩ー気がつくと日常」(丸善ライブラリー2 平成3年4月20日発行 平成3年7月5日第2刷発行) 年表によれば、入場券の自動販売機(券売機)が初めて設置されたのは大正15年とある。大正15年はその年の12月25日まで。同12月25日から昭和元年が始まっている。そして昭和64年は1月7日におわり、翌日1月8日から平成元年が始まっている。そうすると、昭和は64年まであったといっても、その期間は62年と2週間なのだな。 さて、入場券の自動販売機と特定するだけあって、発券されたのは同じ内容の入場券のみ。料金の異なる行き先別など複数の券種を発売する券売機「多能式自動券売機」が登場するのは昭和37年のことであります。 その世界初の多能式自動券売機は、髙見澤電機製作所自販機事業部(現高見沢サイバネティックス)が開発したものですが、昭和44年に製造され、翌年北大阪休講電鉄万国博中央口駅に設置された同機種が、このほど日本機械学会により「機械遺産」に認定されました。 ちなみに「モガ・モボ」とは「モダンボーイ・モダンガール」の略であります。 羅列されている中で、「建物の屋上にまばゆいネオンが登場した。」の一文は余分な気がするのだがどうだろうか。私の読みが浅いのか。。。 #
by epole
| 2011-08-07 15:55
| 小説にみる自販機
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vending machines and Japanese
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