先月24日に亡くなられた北杜夫さんを偲んで。松本市あがたの森公園は、旧制松本高等学校の敷地を整備したもので、旧制松本高等学校の校舎が保存されているほか、「旧制高等学校記念館」が併置されています。 北さんは旧制松本高等学校の出身で、「ドクトルまんぼう青春記」には北さんの過ごした思誠寮のことが多く描かれています。その思誠寮には北さんの書いた落書きが残されていたことは、高校時代から承知していたのですが、すぐお隣(松本県ケ丘高等学校はあがたの森に隣接)に毎日通っていたにもかかわらず、一度もそこへ訪れておりませんでした。 いま、北さんの過ごした「思誠寮」は解体されたところですが、北さんのを含む板に書かれたいくつもの落書きは、旧制高等学校記念館に残されています。 その落書きは、こちら→。 Wikipediaには、私の学んだ信州大学(私は院だけだが)は、『旧制松本高等学校、新八医科大学である旧制松本医科大学(旧松本医学専門学校)、旧制長野県立農林専門学校(旧長野県立農林専門学校)、旧制上田繊維専門学校(旧上田蚕糸専門学校)、旧制長野工業専門学校(旧長野高等工業学校)、長野師範学校等を統合し、1949年に新制大学となった。』と記されている。それならばいっそ同窓会も統合したほうがよい、さもなくば旧制松高同窓会はどんどん萎んでいってしまうのではないか。そのようなことを考えながら松本高等学校の文字の入った法被を買う。しかし、まとまりのある旧制松本高校に比べ、総合大学である信州大学はあまりに大きい。そのような組織の中では、機関紙発行などの事業を行うことさえ困難なのかもしれない。松本高等学校の校章は中央の「高」から9本の線が放射状に伸び9高を示す。この校章はよろしくないと学生から動議が出され、学校側も了解したのだが、代案がなくこのままに留まったらしい。 記念館をでてシベリア杉の並木を歩くと、レンガ造りの建物に沿って、2台の自動販売機が置かれている。その姿は、ほとんどの自動販売機がそうであるような派手派手しい装いではなく、シベリア杉とレンガの建物の中に溶け込むような佇まい。空容器入れも同様なのでした。さすが。さすがといえば、記念館の展示にも、旧制高等学校の気骨を示す展示が多く、文章もその渾身の思いが伝わる名文ばかりでありました。 そんな中で愉快であったのが「寮の不文律(昭和12年寮生規約)」のひとつ 一 寮内には絶対に女性を引き入るべからず。ただし母、姉妹、その他恋人、許婚等止むを得ざる場合は総務委員長の許可を得べし。 ・・・これはいったいなにが絶対に女性を引き入るべからずだかよくわからないのだが。へんなところに目が行ってごめんなさい。 話のわかる総務委員長だといいなぁ。ねえ、北さん。 JR川越駅から札の辻へはバス利用。その車線は対面交通で、通りとしては広くなく歩道もない。蔵の町一番街では人を避けてバスがハンドルを切るのが伝わるくらい。しかし、いったんバスを降りて歩いてみると、この道の広さはどうだろうか。実は川越では20年以上前から無電柱化に着手。蔵の街「一番街」では1992年3月に無電柱化を実現し、その後「菓子屋横丁」や「大正浪漫夢通り」「鐘つき通り」でも無電柱化を実現している。 この空の広がりはいったいなんなのだろうか。 その空の下、この繁華街に自動販売機はなかなか見つからない。それは、バスの車内から街を観察しているうちから気づいているのだが、自動販売機は見事に隠されているのだ。 これはキリンの飲料自動販売機。通りの反対側正面から眺めると、それは他地域に設置されるのと同様、彼が自動販売機であることを必死で訴えてくる。それが、いったん道の反対側、自動販売機の設置された側ではどうだろうか。なんとその本体はしっかりと板戸の向こう側に収納され、その商品補充等に必要な扉部分のみ道路側に露出している。そのため、むこうから歩いてきても、近くに来るまでその存在に気を留めることがないのだ。 その結果、このストレートな通りを鳥瞰しても、そこに景観を損なうものはほとんど見つからない。実に優れた街づくりの姿である。 この街づくりを支えているのは、案外この道の狭さではなかろうか。歩道もない2車線のこの道は、自動車が途絶えたとき、容易に反対側に渡ることができる。左右の店舗が道路で分断されることがなく、一体となっているのである。広い車道と歩道が整備された街では、左右の商店街は分断される。歩行者にとって利用可能な商店数は半減し、商店にとって顧客はこちら側を歩く歩行者のみとなり半減するのである。 そのときは、自動販売機もこちら側とあちら側に設置されることとなるのであろう。 以前から来たい来たいと願っていた川越。私のホームフィールドである信州からは新幹線などを利用すれば2時間弱で到着できる近距離にありながら、これまで訪れることがなかったのですが、このたびようやく訪問することができました。川越の蔵造りの街並みは、JR川越駅から約2キロほど離れた地域にあります。 駅にある案内所で地図をいただいて、まずはバスで「札の辻」へ。バス停からすこし戻り、最初の信号を左に曲がると、そこにあるのが、「時の鐘」。 奈良の大仏様と同じ高さの櫓の上階に鐘が吊るされ、400年の昔から川越の街に時を知らせているという「時の鐘」。そのスマートさは、まさに川越のシンボルというにふさわしいと思わせるものでした。 その「時の鐘」の櫓の右横には、これまた風情のある日本家屋があり、その道路沿いにあるのがびん牛乳の自動販売機と、乳飲料の自動販売機なのでした。 左側あるいは正面から見ると気づかないのですが、乳飲料の自動販売機の右側は板でカバーされ、自動販売機の側面を覆い隠しています。 左側のびん牛乳の自動販売機では、瓶入りのコーヒー牛乳と瓶入りのフルーツ牛乳と瓶入りの牛乳が各130円で販売されています。ただしこの自動販売機の前面は中の見えるガラス扉で覆われ、正面には商品取り出し口がない。そこで利用方法を確認してみると、①代金130円を入れる。 ②商品を選んでそのボタンを押す。 ③扉の向こうの該当する商品を囲っていた透明のケースが回転して開き、商品がこちら側に開放される。 ④扉が解錠される。 ⑤扉をこちら側に開く。(左開き) ⑥商品を取り出し扉を閉める。 ⑦扉が施錠され、商品を取ったあとの透明ケースが回転して閉じ、そのむこうに奥から商品がスライドして補充される。 というものでした。なお、使用の仕方がわからない人のために、自動販売機の右上にインターホンがついているのでした。 そんなわけで、その方法に従って、130円のビン牛乳を購入してその場でいただいたのですが、思い切り濃厚でおいしかったのでした。これは私の大好きな小布施牛乳に匹敵しそうなほどで、やはり牛乳は瓶入りに限ると思ったのでありました。 ひさびさの松代松代といえば真田10万石の居城。長野市に編入されたのは1966年のことだが、はたしてその合併はよいことだったのか。小布施町のように歯を食いしばって独立している自治体のすがたを見るたびに思うところです。 その自動販売機が置かれているのは、真田宝物館のよこての松代物産館の1階の一部。信州デスティネーションキャンペーンが現在開催されているなかの土曜日だというのに、物産館は2階の食事どころを除いて冬季休業にはいり、正面の入り口のシャッターを下ろしている。その横の小さなスペースに、身体を隙間によこにするようにして観光案内所がひらいている。 シャッターを閉めた物産館の左側の壁にはなまこ模様が描かれていて、視線を右に右に移してゆくと、シャッターをすぎ、観光案内所のガラス引き戸のさらに右に、なまこ模様の構造物。それはなまこ模様を模した飲料自動販売機なのでした。自動販売機は2台置かれていて、よく見える右側がサントリーの自動販売機で、こちらは観光客からよく見えるという理由だろう、下半分がなまこ模様とされ、左側の伊藤園の自動販売機はなんの工夫もない自動販売機で、中途半端なのだな。 そもそも自動販売機に景観の一体性をもたせているのならば、どうして物産館の入り口をシャッター下ろしているのか。冬の間は朝も昼も夜もこの光景なわけで、その間ここを歩くひとはどのように感じるのだろうか。 自動販売機設置者の景観に対する意気込みが感じられるだけに、行政の中途半端さをつよく感じたものでした。 ちなみに松本市における新聞販売店における取り組みでは、全体としての景観への配慮はもちろん、なまこ模様の高さも揃っているのですが、それまでをここに求めるのは難しいことなのかな。 錦糸町といえば、小布施のTシャツ畑にオーガニックコットン製Tシャツを提供してくださる久米繊維工業(株)さんがすぐに頭に浮かぶのですが、これは錦糸町駅ビル「テルミナ2」前の自動販売機。このビルの柱はピンクと灰色の太目のよこ縞模様が重なって描かれているのですが、その横に置かれるコカコーラの自動販売機も同様に同じ太さでピンクと灰色のよこ縞模様が彩色され、全体の風景との調和が図られています。 もしここにあの赤いコカコーラカラーの自動販売機が置かれていれば、それだけ突出して浮いたものとなり、まちの調和を乱していたのでしょう。 残念ながら、ほとんどの場所ではそのことに気づかぬままに、自動販売機を含め看板類は自らを際立たせ、まちの統一的景観といったものとはかけ離れていき、おしまいには歩行者にそっぽを向かれることとなるのですが、ここはそれに気がつきました。 残念なのは、この自動販売機が扉の一部をふさいでしまっていることと、欲を言えば、柱の模様と自動販売機の模様に数センチのずれがあることであります。本来であれば自動販売機の足元には転倒を防止するためのコンクリートが置かれ、その上に確実に自動販売機が固定されるはずで、ここでもそのような固定が着実に行われていれば、かさ上げにより、模様はきっちり一致したはず。それを見越して着色されたに違いない自動販売機の文様なのです。 しかし、実際にここにおかれる時は、自動販売機の転倒防止という重要な事項は置き去りにされ、そのような措置がないまま置かれている。そのために、自動販売機の模様が低い位置にあるのであります。 計画の段階ではきっちり計算されていても、設置業者がものを知らないと、うまくいかないものなのだなぁ。実に惜しい自動販売機なのでした。 この自動販売機はこのままでは地震のとき倒れる危険が大きいため、近寄らないほうが無難かもしれません。 信濃毎日新聞といえば、全国紙に引けをとらない歴史ある地方紙で、長野県内では圧倒的な新聞シェアを誇り、我が家でも熱心な新聞勧誘員の勧めにより、ここ数ヶ月は信濃毎日新聞の朝刊を配達いただいているのであります。そんな信濃毎日新聞ですが、松本市内の同専売所は、白壁になまこ模様の、土蔵のような外見を持った専売所が目に付くようになり、そしてその近くには、同様の文様を身につけた飲料自動販売機が置かれるのでした。 写真は松本深志高校の裏手からわが母校信州大学松本キャンパスへ続く通り沿いの、信毎松本専売所沢村営業所。奥が営業所の建物で、白壁になまこ模様となっていて、手前側の道沿いに屋根ととなりに素敵なベンチを伴った白壁になまこ模様という外見を持った飲料自動販売機が置かれています。中町みたいにまわりが同じなまこ壁の風景とあればなおよいのですが、これだけでもまさに、砂漠のオアシスといった感じなのだなぁ。 私の確認した限りでは、このような自動販売機は信毎松本専売所山辺営業所前、信毎松本専売所島立営業所前にも置かれています。 調べてみますと、信毎松本専売所は「なまこ壁蔵風営業所」として、平成15年度に松本市都市景観賞を受賞しているのでした。HPには受賞対象となった5営業所を含め9つの営業所が紹介されています。 自動販売機の外観を建物に調和させる。当たり前のようでなかなか気づかれないことを実施する企業の姿勢を強く感じました。近々にインタビューに行きたいと思うのでありました。
美しい町並みに美しい自動販売機が残る。
その日本家屋には、正面にあのタバコ屋さんの販売窓口になっていて、そこだけタイルなどでモダンな改造がしてあって、窓口部分はシャッターとなっていて、それだけが物悲しいのですが、そのシャッターの閉まった下には、タバコ販売窓口の下の部分組み込み式のたばこの自動販売機となっているのでした。これまで見てきた中で、この構造と出会ったのは初めてのことでした。 この位置にタバコの販売機があるというのを、未成年者が購入しやすいということを言うこともあるだろうし、人がここで商品を購入する場合、かがまなければならないことがいかがかと言う向きもあることだろう。(そういうことをよく言うのは、他でもない私なのだが。)しかしながら、店の真正面のこの目立つ場所で、こんなに低い位置の販売機を使用してタバコを買う未成年者がいることを想像できないし(なにせ低すぎてそうそう簡単にタバコは変えないだろう)、タバコのような、タバコを嗜まない者に害を与える商品を販売する窓口は、こんな位置にあるのがふさわしいなんて感じる私がいるのでした。 他のどんなたばこ自動販売機も、こんなに素敵に置かれることはないだろう。 その美しい町並みを流れるように歩いていきますと、右側に塀に組み込まれた自動販売機が一台、夕暮れの中、ディスプレイが四角く塀に窓を作って光を放出しています。このような茶色の色合いの自動販売機は小布施町の木下ラジオ店をはじめとして多数設置され始めているのですが、どれも中途半端で、ただ景観に配慮しましたという言い訳のためにその色の塗料を塗られているように感じられるのでした。 それに対し、この自動販売機はどうだろう。木製の塀の中に組み込まれた自動販売機は、見事に塀にマッチしている。塀の塗料が先に塗られたのか、自動販売機の塗料がそれに合わされたのか。そう考えてみると、塀、屋根、雨どい、自動販売機のすべてが調和を感じさせる。 このような自動販売機を見たとき、そこに設置した人の心意気を感じる。行政に対する言い訳でなく、単に色度という数値のみを相手にするのではない。 この自動販売機は、そこにあってもかまわない自動販売機ではなく、景観上そこにあることが好ましい自動販売機となっている。 そういえば、岐阜市内の自動販売機の多くが建物に組み込まれて設置されている。そのような素地が町並み保存とあいまって、このような素敵な空間を生み出したのではないだろうか。 ここは松本インター近くの信濃毎日新聞販売店。建物全体が蔵風のデザインをもち、壁の上半分が白壁、下半分がなまこ模様で統一されています。そして、その手前に置かれているのがコカ・コーラの自動販売機ですが、こちらもまた建物と同様のデザインで統一。さらに空容器入れも統一されています。 わたくしとしては、ここに赤いコカ・コーラカラーの自動販売機が置かれるよりも宣伝効果があるもので、ここにこの自動販売機があることが、かえって豊かな景観形成に寄与している可能性を認めるのです。 こちらについては、さらに分析を試みたいと思います。 松本市内の信濃毎日新聞販売店では、ずいぶん前に山辺販売所が同様の取り組みをしていたところですが、それは受け継がれていたことを知ったところです。 こういうところに貼られると、さんまちゃんのポスターもなんとなく味わいがある。最近のポスターが薄っぺらく見えるのは、それ自体の問題ではなかったのかもしれない。 午後の5時とはいえこの季節、まだ夕暮れには早そうなものですが、小雨の舞う上野公園の林のなかは、そろそろ薄暗く、そのなかに自動販売機のディスプレイ部分が四角く明るく浮き出して見えます。そのようななかにあった一台。道に沿って竹垣が続いています。その竹垣の一部が四角く光ります。そこにいたのはかぐや姫ではなくて飲料の自動販売機。 その筐体の正面は左右に続く竹垣とまったく変わることがない、一面の竹垣。ディスプレイ部だけが竹で覆われず、不思議な異空間となっています。 ここに自動販売機を置いた人の気持ちが伝わってくる。ただ単純にここに自動販売機を置くのと、このような形で置くのと、これほど気持ちが違うものか。 さらに、ここに自動販売機がなくて竹垣が続いていたとする、その印象と、この自動販売機がある印象では、どちらが好ましく感じるだろうか。 飛騨高山の景観保全地区内には、町並みに完全に同化したたばこの自動販売機がある。その自動販売機にCG処理を施して自動販売機のない状態、赤、白の自動販売機が置かれた状態の写真を作成し、SD法で分析したところ、いくつかの項目で擬態自動販売機が自動販売機がない状態よりも好ましい評価を得た。この竹垣でも、同様の評価が得られるかもしれない。 竹垣が続くのは自然の姿なのだが、そこにこのような工夫をした自動販売機が置かれることは、それを設置した人の心意気、風情や景観を大切にする気持ちが強く伝わってくるのだ。 いくつかの自治体では、条例により環境を保全しようとしており、そこでは自動販売機も規制の対象となることが多い。それらでは、色度といった数値で機械的に規制をしようとする。しかし、それではこのような自動販売機は生まれてこない。 大事なのは、心が伝わることなのだが。 < 前のページ次のページ >
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vending machines and Japanese
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