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風俗画報の自動体量計
浅草の賑ひ(纘) 乙羽庵主人

此方は打って革細工、カバン手提げと仏蘭西靴。地相火相に人相見、身の上精しく一銭を、正札附の賣卜聞いて、前世の因果と涙ぐむ湯屋の三助。今戸焼の達磨元禄女郎を傍に置き、浮世を茶にして悟り顔。實に東國の三十三所、淺草に勝す寺も無く、南無一群の巡礼衆、二世安楽はほんの名ばかり、風袋引けバ願ひ叶った東京見物。この賑やかと何んとして、是はゝと驚くのみ。繪馬は珍らし提燈も、勇む魚河岸大根がし、お守り買ふて御影受けて、婆々が孫への後生の土産。ハイ御明しと投げ込む錢箱、義母子の數を算へて見たり、何間あると柱を讀み、豪氣なものと珠數爪繰る性根の優しさ。お神楽堂に念佛堂、神祇釋教戀無常、寺は名と負ふ傳法院、社は世と鳴る淺草神社、鐘に名代の鐘楼あり。稲荷地藏に大寳殿、經藏大佛薬師堂、閻王殿を子は恐はがれど、隣りは子育婆王尊。神馬と豆買ふ翁あれば、一錢投げて身體の量目を獨りで試めす自動器あり。さて、奥山の見物には・・・(後略)

わたくしが読んでいるこの本は、
風俗画報 第十九號 東京東陽堂発行(明治23年8月10日)

かつて読んだ「明治事物起原」(石井研道1908)には、明治21年夏頃自動体量計が浅草公園に置かれた旨の記載があるのだが、この風俗画報はそれを裏付ける貴重な史料なのだな。
風俗画報は、明治22年に刊行された月刊誌で、大正5年3月(第478号)までが復刻され、図書館で読むことができます。

ところで、明治7年に上野公園内に自動體量計が置かれていたと本に書く人もいるが、それを裏付けるしっかりとした納得のできる史料に私はまだ出会っていない。
by epole | 2009-06-28 15:39 | 小説にみる自販機


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