「タイムスリップ・コンビナート」の自動販売機
ホームの自動販売機で熱い缶コーヒーを買う。さっきまで出ていた汗が引いていてむしろ寒い位だ。切符を無駄にしてでも外に出たい。-鶴見から百五十円と印刷をされた、穴の開いた切符を自動改札に差し込んで飛び上がった。激しくブザーがなる。入場券ではないが、一旦入ったホームからそのまま出るのだ。別にキセルではないだろうに。
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無人駅のホームの壁には広告の看板を剥がした跡があるだけ。券をお入れください、という表示の箱に切符を落とすと、底に当たる音。
・・・・・・自動販売機が並んでいる。私の田舎の無人駅には、こんなにいくつもの自動販売機は並んでいなかった。あってひとつだ。
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浅野駅の待ち時間の間に自動販売機から紅茶を叩き出して、あんだかしーのパックを開け、ベンチに座り込む。紅茶はホットと表示してあるのを当然のように選んでいて、寒気はまだどんどん強くなった。

わたくしが読んでいるこの本は、
笙野頼子 著 『タイムスリップ・コンビナート』(111回芥川賞受賞)平成6年上半期

去年の夏頃、電話の声に導かれ、主人公の沢野さんはJR鶴見線の終着駅、「海芝浦駅」にいく。
最初に登場する自動販売機は「鶴見駅」のホーム、次は「武蔵白石駅」、おわりが「浅野駅」。
平成6年には、駅には自動販売機が当然に設置されている。
主人公は電車に乗っているばかりでなく、けっこうな距離を歩いて移動しているようなのだが、その行程に自動販売機の記述は無い。

芥川賞受賞作を確認していくと、昭和54年上半期(愚者の夜)から平成6年上半期(この作品)までの15年間自動販売機が登場しない。この空白がバブルと呼ばれる時代と重なっているのは偶然か?ひさびさに登場したのは駅周辺の自動販売機だった。
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by epole | 2007-05-10 06:24 | 小説にみる自販機


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