「あさくさの子供」の自動販売機
階段を昇りつめ、右側を見廻したが、星子は見当らず、葛飾あたりから遠征してきたらしい、うす汚れた男の児たちが、しきりにキャラメルの自動販売機をたたいていた。お金入れなきゃ、出ねえよ、と、背のすぐれた無帽の児が、物知り顔にいうと、出るわよ、もっと強くたたいてごらんなさい、と、いいながら近寄って来る者があった。星子だ。咄嗟に私は柱のかげに身をかくした。

わたくしが読んでいるこの本は、
長谷 健 著 『あさくさの子供 星子の章』 (第9回芥川賞受賞)昭和14年上半期

場所は浅草の松屋デパート7階のスポーツランド。その日の午後授業が終わると、教師である「私」は帽子もかぶらず、星子の後を尾行る。雷門で一旦見失うが、松屋の自動販売機前で、再び星子の姿を見つけるのである。(でも結局逃げられてしまった。)

いままで写真で知っていただけのキャラメルの自動販売機が、小説のなかでいきいきとよみがえる。それはその時代確かに存在し、このように子供たちに親しまれていたのだ。
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by epole | 2007-04-15 02:16 | 小説にみる自販機


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