いつか汽笛を鳴らして の自動販売機
間違って60円区間買っちまったんだ、おじさん買ってくれませんか、私亀有までしか行かないのよ。切符自動販売機の前で小銭入れから金を出そうとしている地下足袋姿の男に、中年女が話しかけている。
・・・
並んで立つと、彼女はぼくよりほんの少し背が高い。決して美しいという顔立ちではないが、派手な服の着こなしや浅黒い肌のはりは、改札口を出てくる女たちの中でもひときわ目立つ。ぼくは、有頂天になってしまって、切符自動販売機に差し込む硬貨を二度も間違えた。

わたくしの読んでいるこの本は、
畑山博 著 『いつか汽笛を鳴らして』 (第67回芥川賞受賞)昭和47年1月発行

『券売機』ではなく、『切符自動販売機』なのだな。大辞典では「乗車券販賣器は自動券賣器なる名で呼ばる」としているが、案外、券売機という呼び方は一般的でないようだ。

「切符自動販売機に差し込む硬貨を二度も間違えた」とはどのような状況なのだろうか。
現在の自動販売機は殆どの場合10円、50円、100円、500円硬貨に対応している。(一部では500円硬貨には対応していない。)
そうすると、「ぼく」が二度も間違えて差し込んだのは1円玉か5円玉だったのだろうか。それはかなり深刻な精神状態だぞ!それとも、その時代の自動販売機に他の要素があったのだろうか。

ここだけ抜き出して読むと誤解しやすいのだが、地下足袋姿の男に話しかけている中年女と「ぼく」が有頂天になっている「彼女」は全くの別人であります。念のため。
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by epole | 2007-04-09 06:21 | 小説にみる自販機


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