三島由紀夫氏と自動販売機
『金閣寺』『潮騒』などの著作で有名な三島由紀夫氏は1925年生まれ。『金閣寺』で読売文学賞小説章を受賞したのが1956年。その後、十数年の著作活動、芸能活動などの後、1970年、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決をしているのであります。
人々に三島由紀夫氏のイメージを問うてみますと、やはり中学校の修学旅行の折に学習をしたためか、まず『金閣寺』の作者であること。その次に、市ヶ谷での自決なのであります。
私は、大学生であったときは、ほとんど講義に出席をせず、朝から夜まで図書館にこもるという生活を2年ほど続けている時期がありました。しかしながら、三島文学についてはその時期ほとんど接することがなかったのではありますが、ただ、『音楽』という作品だけが、その甘美な最終章、『音楽とまることなし』の響きが心の中を駆け巡っていたのであります。
さて、その三島氏が著作活動を活発に行った1960年代は、以前述べたように、自動販売機の大普及期でありました。氏の著作の中に自動販売機の文言がないか、読み直してみました。
『不道徳教育講座』というエッセイ集が角川文庫から出版されています。これは、1958年に「週間明星」で連載されたものですが、このエッセイ集の「人の失敗を笑うべし」のなかに自動販売機が登場しています。
「自動販売機にチャンと故障と書いてあるのに気づかず、いくつも十円玉をギセイにして、顔から湯気を立てているおじさんを見ることは、何て嬉しいんでしょう。」
三島氏の小説には登場することのない自動販売機が、このあまり秀作ともいえないエッセイ集の中で一回だけ使われています。
三島文学の中で、自販機はけっして『音楽』を奏でる存在ではなかったのであります。
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by epole | 2005-06-12 23:45 | 小説にみる自販機


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