「かたちだけの愛」の自動販売機
一口飲んで、おくび混じりの溜息を吐き、もう一口飲もうと小瓶を口に当てかけた時、風呂上がりの女が一人、こちらに向かって歩いてきた。(中略)こちらを見ているのかと思ったが、自動販売機かと、小脇に避けて、オロナミンCの残りを飲み干した。立ち去ろうと、ゴミ箱にビンを捨てかけた時、女と目が合った。(中略)ディスプレイの光が、乳液で輝いている彼女の顔を横から強く照らした。

私が読んでいるこの文章は「かたちだけの愛(188)」(平野啓一郎著。読売新聞連載中)

連載第187回で登場したオロナミンCの自動販売機が再登場です。
主人公が風呂上がりにオロナミンCを飲んでいると、そのオロナミンCを買ったばかりの自動販売機の前で、これまた風呂上がりの美人との出会いがあるのです。
ところで、主人公は「ゴミ箱にビンを捨てかけた」のだが、私にはこの「ゴミ箱」という表現には少し抵抗があって、私だったら「ビン容器入れ」とか呼ぶのだろうと思うのだが。ゴミはゴミだが回収され再資源化される容器はゴミではない。主人公にはすこし環境に対する認識があまり高くはないようである。
そんな主人公が自動販売機の前で、すんなり美人と出会ってしまうのを、私はすこし妬ましく思う。
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by epole | 2010-03-19 20:12 | 小説にみる自販機


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